top of page
大工だからできること、大工にしかできないこと

日本の大工は、家の構造から細部に至るまで技術と経験を積んできました。数学的な美しい比率、ピタゴラスもびっくりの差金などの道具、カラクリとも思えるような継手(柱・梁などを組みつなぐ)技術があります。伝統工法の石場建てなどに見る石のいびつな形状に合わせて材木を自在に切ることもできるのです。そこには人が心地よいと思う空間や意匠を追求し形にしてきた、長い歴史があります。

そしてひとつひとつの素材を生かそうとするたゆまぬ努力。布地に型紙を配するように材料を無駄なく使い、適材適所を実現する経済感覚。日本らしい粋と、あたらし物好きの遊び心を取り込む懐の深さ。大工だからできる、そして大工にしかできない仕事です。

数寄屋スタイル

​「数寄屋づくり」という建築様式は、”様式のない建築”と言われます。新しいものやミスマッチなもの、あるいは考えもつかなかったものを建築に取り入れる創意工夫、形式にとらわれない自由な発想と革新、時代を切り拓くデザインの創出でもありました。

そんな数々の美しい意匠や工夫が日本家屋を形造っています。それは家を愛する大工の細やかな心遣いと職人としての挑戦でもありました。その精神の伝統を受け継いでゆく。美術品ではなく、私たちの暮らしの豊かさであったもの。これからの数寄屋づくりを目指す、その思いを込めて、私たちは「数寄屋スタイル」を提唱します。

日本家屋について

「真壁」という言葉をご存知ですか?

​いま、マンションや賃貸住宅、建売り住宅などでは「大壁」づくりが主流です。

「大壁」とは部屋の柱が見えない、クロスなどの壁材で柱を覆ってしまうスタイルです。

なんとなく洋風に見えますが、主流になった大きな原因の一つには価格があります。

クロスで隠せば、価格の安い材を使え、販売価格も安くできる。それが輸入材の拡大につながってゆきました。国産材は高級品とのイメージが定着して嫌われるようになり、需要が減って林業が衰退、いっそう高くなってゆきました。

林業が衰退し、人手が不足し、山が放置され、今や環境にまで影響を及ぼすようになってしまいました。

国や自治体は状況の改善に向け、様々な対策・援助を行ってきました。これにより国産材の価格は少しずつ改善し、為替相場などの影響もあってかつてほど輸入材に水をあけられているわけではありません。

家の話に戻ります。

こうしていつの間にか日本の住宅に柱が見えなくなり「真壁」という言葉すら忘れられかけています。

「真壁」と「大壁」の違いはなにか。見た目だけでなく、空間づくりに違いがあります。柱まで覆う「大壁」づくりは壁面が少しずつ前にせり出し、空間=部屋を狭くします。数ミリという単位ですから、それほど影響しないのでは、と思われるかもしれませんが、人の感覚というものは意外に繊細です。階段など狭い場所ではいっそう狭く感じさせますし、一面単調な壁が四方から少しずつ寄せているため圧迫感もあります。

​一方、柱を組み合わせた「真壁」の壁面は、縦横のラインによってリズムが生まれ、それにより視線が自然と動くことになります。視線が自然に動くというのは景色を眺めることに似ています。息が詰まらない空間演出ということもできるでしょう。

庇は日本だけのものではもちろんありません。なぜなら庇は家を守るという重要な役割を担っているからです。玄関、窓、壁、これらが風雨や日光に晒されないために設けられます。皆様の家の窓ご覧になってみてください。庇は設けられているでしょうか。激しい雨などが直接窓や壁に当たっていませんか。これが雨漏りなどの原因にもなり、住宅の傷みを早めています。

​もちろん住宅の保護にとどまらず、庇は光や風をコントロールし、さらには縁側のように、外の景色を部屋の一部に取り込んで一体になる効果を持っています。

建具と襖

「建具」=「たてぐ」と読みます。「けんぐ」ではありません。窓、障子、戸などです。

木と紙でつくられたこれらのものは、部屋全体の雰囲気を決めると言っても過言ではありません。そういう意味ではアルミ製のサッシやドアもその家全体の美しさを左右するものだと言えます。高いお金を払って建てた割に既製品ぽく見えてしまうのもこのアルミ製品のせいではないでしょうか。丈夫で長持ちとうたっていますが、時間の経過とともにむしろその汚れや傷みは目立ちやすく、時代遅れの感も否めません。それにひきかえ、木でつくられた窓やドアは、時とともに風格をそなえ、味のある重厚感が出てきます。

​また「障子」や「襖」には、様々なデザインがあり、応用度、自由度も高いと言えます。洋風のテキスタイルに負けないかっこよさ、日本ならではのシャープで繊細なデザインに目からウロコ!です。

​最近では伊藤若冲ブームなど、日本の構図やデザインが現在のポップカルチャーにも匹敵する洗練されたものであったことが話題になっていますが、さらに時代を遡った桂離宮や修学院などの襖柄にはド派手な柄でありながら、上品さを失わない都会的で高いデザイン力に出会うことができます。このデザイン力を日本の職人は継承しているのです。

Cool Japan

​美しい日本の家

bottom of page